
私の実家では年末になると、「七味五悦三会」ってものをやっていた。
別におおげさなものではなく、年越しソバを食べて紅白見ながら
その年に食べた、7つのおいしいもの、5つの楽しかった出来事
新たに出会ったステキな3人、について語るというものだ。
「部活のテニス部で小さい大会だけど優勝できたこと、あっ、その帰りに
食べたおでんがおいしかったし、N子さんに、優勝おめでとう、って
言ってもらえたなあ。」
そんなことを話したりしていた。
(実際には、N子さんについては親に言うのは恥ずかしいのでふれなかった。
中学2年の年の暮れだった。)
大人になってからは、「私の10大ニュース」ってものを友達等と
言い合って遊んでいる。暗いことは言いっこ無しってことで
その年あった楽しい出来事について語りながら、クリスマスや
大晦日を過ごしてた。
今年もいろんなことがあったけど、自転車に関係する楽しい出来事
がたくさんあった1年だった。昨年はずっと一人で走っていたが
朝練に参加して、他の人と一緒に走るようになった。
自転車で初めて坂をのぼり、レースにも出るようになった。
入賞もできたし、落車もした。ウイダーインゼリーとパワーバーを
たくさん食べた。ツールドフランスも見に行った、ラルプデュエズの
ふもとで食べたフランスパンはとても固かった。ツーリングで奈良に
出かけたら、その集合写真が雑誌に掲載されたし、その時に食べた
山菜蕎麦もまたおいしかった、ピストでバンクを走ったし、来週には
シクロクロスにも挑戦してみる。
そしていろんな人との出会いがあった。
今日はいつもお世話になっているクラブの忘年会だったのだけど
そこに参加していた30数名の人達すべてと今年知り合ったことになる。
坂好きのMさんはクラブの平地好きな人達のことを
「彼らはリズム感がないんだよ、リズムが無い人は坂がのぼれない。」
という独自の理論を展開しながら、テーブルでドラムを叩くマネをする。
なんでも昔は「いかすバンド天国」にも出たことがあるらしい。
Fさんはワインで顔をほのかに赤くしながら
「ピスト買いますよ、コルナゴピスタ、あとね、デローザキングの新しい
のも注文したよ!」と嬉しそうに話をしていた。
ドグマ、ハイペロン、ライトウェイトといった機材を惜しみなく練習(雨でも)
に投入し、某耐久レースでは走りながらトイレまですましてしまった。
18歳のI君はウーロン茶なのに、なぜか顔が赤くなってきている。
誰かが中に焼酎でも入れたのだろうか。夏の鈴鹿のオープン4で準優勝
富士須走のヒルクライムでも18-27歳クラスで優勝、来年は実業団登録
もするという。
初レースで2位にはいった女性のYさん、市民クラスの女性部門では
優勝だった(そんなクラスは無いのだけど)と言い張る同じく女性のTさん
私の10数年前のWレバーのカーボンバイクを見て、懐かしいなあ
これはいいなあ、と繰り返していたKさん、優勝回数ダントツのFさん
東京に引っ越すK君、またがる人がみんなこけるという呪いMTBのMさん
レース派、ツーリング派、機材派、年齢も職業もバラバラの人達が
「自転車が好き」っていうキーワードでつながっている。
この日、おいしいイタリアンを提供してくれた、トラットリアリュウ
のオーナーさんも、DHをこよなく愛する自転車愛好家だった。
何かの表彰をするわけでも、ゲームやカラオケをするわけでもない。
楽しくなるのも、そうでないのもこの場にいる人達の行動次第
おいしい料理にお酒が入って、会話ははずんでいく。
このクラブの中心、ハートアンドソウルであるYさんが顔を真っ赤
にしながら、自転車への思いを話している、そこに聞き耳をたててみる。
「僕は若い頃は、競技として自転車に取り組んでいました、環境にも恵まれ
いくばくかの素質もあったので、国の代表に選ばれたりもしました。
それ以前はずっと油絵を描いていました、心を静かにしてキャンバスに
向かうのも幸せだったけど、プレッシャーを感じながら、ぶっ倒れるまで
クランクを回す生活もまた幸せやった。
20代後半からは自転車のパーツの開発に携わることになって、自分が
開発を手伝ったパーツが日本中の人達や海外でも使われいる
のを見ることができた。これも本当に幸せなことだった。
MTB黎明期には、アメリかでゲーリーフィッシャーなんかと一緒に
新しい自転車が誕生し普及していくのをすぐ近くで見ていた。
30代、40代もずっと楽しかった、お店をやるようになり、エンドユーザーと
直接向き合うのは、開発者時代とはまた違う楽しさだった。
そして数年前にクラブを作り、僕もまたレースに出るようになりクラブ
のみんなもたくさんレースに出たり、いろんなとこをツーリングしたり
しています、そしてこうしてたくさんの人達に囲まれてやっぱり今も
幸せです、僕の人生、幸せなことばっかりで、なんだかもったいなくて
死なれへんよ。」
この「もったいなくて死ねないよ。」って言葉にはジンときてしまった。
多分、それはYさんの本音だろうし、またそうやって幸せそうに生きている
人だからこそ、まわりに人がたくさん集まってくるんだろうと思う。
飲み過ぎてしまったYさんは、迎えに来たスタッフの車に自転車ごと
放り込まれて帰っていった。
それを見送った私達は、そんなYさんのことを酒の肴にしながら
次のお店でも盛り上がっていた。今年出会えたステキな人達に感謝します。
